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高所作業中の転落事故などで高次脳機能障害が疑われる(労災事故)

2022/03/30

労災事故に遭った場合の注意点

最初に労災事故に遭った場合の注意点についてご説明致します。
誤った判断をされている方が非常に多いことから、まず最初にお読み下さい。

労災事故に遭った場合、労災保険が適用されることは皆様もご存知だと思います。

しかしながら、労災事故に遭った方が受け取ることが出来るお金は、労災保険からの給付が全てではありません。

労災保険から支給されるのは、治療費と休業損害の一部(6割+特別支給金2割)のみで、慰謝料等は含まれていません

なお、後遺障害が認定された場合には、障害補償一時金等が支給されますが、これも後遺障害に関する賠償金の全てを補償するものではありません。

したがって、労災事故に遭われた場合、労災保険から支給されたもの以外に慰謝料等を会社や会社が加入する保険会社等に請求する必要があります。

ところが、労災保険からの給付が全てであると誤解され、会社に対する請求を行わない方が非常に多い印象です。

また、会社の担当者も、労災事故の補償は、労災保険から全てなされると誤解していることが多く、労災保険の手続を行ったので、会社としてはやるべきことは全てしたといった対応をすることが少なくありません。

なお、労災事故がご自身の不注意によって発生した場合においても会社が全く責任を負わないことの方が少ないことから、労災事故に遭った場合には、必ず専門家に相談することをお勧めします。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、転落事故などで頭部を受傷し、大脳が損傷を受けたことによって、認知障害、行動障害、味覚障害、人格変化が起こることを言います。

頭部外傷を受傷したことによる意識不明後に生じる様々な障害とお考え頂いて問題ないと思います。

重度の高次脳機能障害の場合には、寝たきりの状態になるなど、明らかな認知障害、行動障害、人格変化が生じることから、後遺症(後遺障害)が見逃されることは少ないと思われます。

しかし、軽度の高次脳機能障害の場合には、なんとなく物覚えが悪くなった、少し性格が変わったなど、現れる変化が小さいことから後遺症(後遺障害)が見逃されることが多々あります。

労災事故によって意識不明の状態に陥った場合、家族にとっては、意識を回復するかが一番の関心事であり、意識を回復した後のことを考える余裕などないことから高次脳機能障害が見逃されることも無理もないことなのかもしれません。

高次脳機能障害が疑われる病名一覧

高所から転落し頭部を強打した場合や落下物が頭部を直撃した場合で、下記のように診断された場合には高次脳機能障害が残存する可能性がありますので注意してください。

一般的に、意識不明の状態若しくは意識がはっきりしない状態が6時間以上続いた場合には、高次脳機能障害が生じると考えられています。

病名(傷病名)一覧

  • 脳挫傷
  • 頭蓋内血腫(出血)
    • 硬膜外血腫(出血)
    • 硬膜下血腫(出血)
    • くも膜下血腫(出血)
  • 頭蓋骨骨折
  • 頭蓋底骨折
  • 脳震盪
  • 頭部打撲
  • 頭部外傷Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型
  • びまん性軸索損傷

労災事故で上記のような診断を受けた方は、たとえ意識が回復しても、高次脳機能障害の可能性があります

高次脳機能障害は見逃されることが非常に多い後遺障害ですので、最後までしっかり読んで頂き、適切な対応をしていただければと思います。

脳外科での治療だけでは不十分

転落事故などで頭部を受傷し、意識を失った場合には、救急搬送後、脳外科で治療を受けるのが一般的です。

脳外科においては、専ら脳からの出血を止める目的の治療が実施されます。

したがって、脳からの出血が止まり、その後の出血の可能性が低くなった場合、脳外科の医師から、これ以上治療する必要ないと言われることが少なくありません。

確かに、出血が止まった以上、脳外科でそれ以上の治療を行う必要はありません。

しかしながら、ここで注意すべきは、脳外科での治療の必要がない=元の状態に戻ったではないということです。

なぜなら、一度損傷した脳は、再生することはなく、損傷した脳が担っていた何らかの機能が失われている可能性が非常に高いからです。

例えば、言語を掌っていた部分を損傷した場合には、発言が困難になるなど何らかの障害が残存している可能性が非常に高いのです。

この点は、皮膚を切って出血した場合に、出血が止まり、かさぶたができ、かさぶたが取れれば元通りなるのと全く異なっていますので、注意が必要です。

そのため、本来であれば、出血の可能性がなくなった後、脳の損傷により、どのような機能が失われたかを検査し、今後、どのような生活を送るべきかを考える必要があるのです。

ところが、このような検査は、一般的に精神科において実施されるのですが、脳外科の医師は、出血を止め、命を取り留めることを重視する傾向にあり、残存した機能障害について無関心なことが多いことから、精神科を受診するよう勧めることは稀で、その結果、十分な検査が実施されることなく全ての治療が終了することが少なくないのです。

脳外科の医師が言う、治療の必要はない=完治ではないということを肝に銘じて適切に対応して下さい。

家族などが注意深く見守る必要がある

軽度の高次脳機能障害の場合には、他人が障害に気付くことは困難であるように思います。

人には個性があり、気性の荒い人、温和な人、几帳面な人、大雑把な性格の人、頭の回転が早い人、頭の回転が遅い人など様々な人が存在しますので、労災事故前の状態を知らない他人の目からは、個性なのか障害なのかを判断することは非常に困難だからです。

そのため、家族など周りの人は、労災事故前と労災事故後で何か変わったこ点がないかを注意深く観察する必要があります。

精神科を受診した際には、医師から必ずと言って良いほど聞かれますので、労災事故前と労災事故後で、どのような点が変わったかをメモ書きにして残しておくと、検査の際に役立つと思います。

高次脳機能障害において必要な検査

頭部外傷で救急搬送された場合、通常はCT撮影を行い出血の有無・程度を確認することが一般的です。

また、通常は、MRIの撮影も行うことから、画像が全くないというような事態に陥ることは少ないと思います。

しかしながら、受傷直後に撮影するCTやMRIは、出血の有無・程度を確認するために実施されるものであることから、高次脳機能障害が残存したか否かを判断するうえで有効な画像であるとは限りません。

高次脳機能障害が残存しているか否かを判断するには脳に傷が残っているか否か、どの部分に傷が残っているかを確認する必要があることから、精度の高いMRIで撮影することが有用です。

したがって、一般的な1.5テスラのMRIではなく、精度の高い3テスラのMRIで頭部を撮影することをお勧めします。

高次脳機能障害であることを証明するための最も有効な手段は画像所見であることは間違いありませんので、1.5テスラのMRIで撮影しても異常が認められない場合には、3テスラのMRIで撮影してみることをお勧めします。

私が過去に受け持った事案で、3テスラのMRIで撮影した際には何も映らなかったものの、大学病院で7テスラのMRIで撮影したところ、脳の傷が映ったこともありますので、頭部外傷後に異常をお感じの方は医師に相談してみることをお勧めします。

以上のMRIの撮影に加えて、最も重要な検査が、神経学的検査です。

神経心理学的検査とは、口頭の質問や文字・図形・絵など用いたテストを行い、知的機能や認知機能、記憶、実行機能などにどのような影響があるか調べる検査です。

労災事故の被害者の方が、もっとも陥りやすい誤りは、この神経心理神学的検査を受けないことです。

その原因は、
どこの病院でも神経神学的検査を受けることが出来るとは限らないこと
脳外科の先生の中には、神経心理学的検査を軽視している先生が少なくないこと
が挙げられます。

実際、私も、高次脳機能障害の疑いがある依頼者に対し、脳外科の先生に、神経心理学的検査を実施している病院宛ての紹介状を書いて貰うようアドバイスをしたところ、依頼者から、『脳外科の先生が「そんな検査を受ける必要はない。」「なぜ、そのような検査を受ける必要があるのか分からない。」「弁護士から直接理由を聞きたい。」と言っている。』と言われ、医師に説明に行ったり、手紙を書いたりしたことは、1度や2度ではありません。

神経心理学的検査を受けることによって、
高次脳機能障害の有無や程度を知ることが出来ることに加えて、

仮に障害を受けていた場合には、

どのような能力に障害を受けているかを知ることが出来ることから、今後、どのようなことに気を付けて生活していく必要があるかを知ることが出来ます。

①については、まさに後遺障害の等級認定に関わる問題ですが、労災事故後の長い人生を考えた時には、②の持つ意味は非常に大きいように思います。

少なくとも、神経心理学的検査の存在を知らなかったがために、実際には、高次脳機能障害であるにもかかわらず、自らが障害を負っていることにすら気付かずに、かつ、適正な賠償金も受けられずに、その後の人生を送ることだけは避けて欲しいものです。

後遺障害などと大げさだと思われる方も少なくないかもしれませんが、高次脳機能障害で9級若しくは7級の認定を受けられた方の大半は、日常会話は問題なく出来るなど障害がない方との明らかな違いがないように思います(一見しておかしな場合には、5級以上の等級が考えられます。)。

高次脳機能障害における後遺障害等級

3級3号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
a. 生命維持に必要な行動はできるが、労務に服すことができない
b. 記憶や注意力等に著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難である

5級2号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
a. 単純繰返し作業等に限定すれば一般就労可能だが、特に軽易な労務しかできない
b. 一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができない

7級4号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
a. 特に軽易な労務等に限定すれば一般就労可能だが、軽易な労務しかできない
b. 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができない

9級10号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
a. 通常の労務はできるが、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される
b. 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題がある

自賠責保険の高次脳機能障害の後遺障害の認定理由(7級4号)

労災保険を使って後遺障害の申請を行った場合、認定結果が知らさせれるだけです。
そのため、どのような理由に基づき、結論に至ったのかは分かりません(中身を詳しく知りたい場合には、情報開示を行う必要があります。)
そこで、労災保険と同一の基準で判断している自賠責保険の認定理由から、そのようなことを考慮して、高次脳機能障害の有無・程度を判断しているのかを見ていきましょう。

認定を受けるために、最低限行う必要がある検査・診察

⓵ 損傷の有無を画像上判断する必要があることから、
・MRI撮影(通常のMRI撮影では、1.5テスラMRIが使用されることが多いですが、3テスラMRIでの撮影をお勧めします。)

⓶ 損傷による影響がどの程度であるかを判断する必要があることから、
・神経心理学的検査

⓷ 後遺障害の認定を受けるためには後遺障害診断書の作成が必須であることから、
・高次脳機能障害の専門医による診察
を受ける必要があることがお分かり頂けると思います。

なお、場合によっては、スペクト検査やペット検査を実施する必要があることもあります。

労災事故後の生活について

後遺障害の等級認定を受け、適切な賠償金を受けることにより、全てが解決するわけではありません。

その後も、後遺障害を負ったまま生活をしなければなりません。

頭部に外傷を負った場合、受傷後3年~5年程度の間は、てんかんが起きる可能性が高まると言われています。

そこで、高次脳機能障害情報支援センターなどで、専門家の力を借りることも大切ではないでしょうか。

大阪鶴見法律事務所の高次脳機能障害への対応

1.高次脳機能障害の可能性がある労災事故の被害者の方については、診断書や画像をもとに、弁護士が聞き取りを行います。

2.MRI画像がない場合(CT画像しかない場合も同様)や画像が不鮮明な場合には、、協力医のもとで3テスラMRIで撮影を行い、脳の損傷の有無を確認します。

3.脳に損傷が認められる場合、弁護士が付き添い、国立大学病院で高次脳機能障害を研究している医師のもとで診察を受けて頂きます。

4.高次脳機能障害の疑いがある場合には、大学病院で、神経心理学的検査を受けて頂きます。

5.神経心理学的検査の結果、高次脳機能障害であると診断された場合、医師に後遺障害診断書を作成して頂き、後遺障害の等級申請を行います。

弁護士が検査を手配し、診察にも立ち会えるのは、医師との太いパイプがあるからこそです。

大阪、京都、神戸、滋賀、奈良、和歌山など近畿周辺で高次脳機能障害に詳しい弁護士をお探しの方は大阪鶴見法律事務所ご相談ください。

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