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労災事故での治療中の解雇について

2022/01/25

労災事故での治療中は解雇できない

労災事故に遭い、治療している状況下で、会社から解雇を言い渡されることも少なくありません。
そこで、労災事故での治療中の解雇が許されるのか、どのような場合に許されるのかを確認していきましょう。

労働基準法19条1項は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間、労働者を解雇してはならない旨を規定しています。

したがって、労災事故で働けないことを理由に解雇することは許されないのが原則です。

万が一、会社から、労災事故で働けないことを理由に退職するように言われた場合には弁護士に相談することをお勧めします。

解雇が可能な場合とは?

症状固定から30日以上経過した場合

症状固定日から30日以上経過した場合には、解雇が可能となります。

症状固定とは、「傷害に対して行われる医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待しえない状態で、かつ、残存する症状が自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したとき」と定義されており、一般的に、それ以上治療を継続しても改善が見込めない状態に達したときを症状固定というとされています。

したがって、完治した日若しくは治療を継続しても改善が見込めない状態に達した日から30日以上経過した場合には解雇が可能となります。

打切補償を支払った場合

使用者が労働者に対し、労基法75条に基づく療養補償を行っている場合において、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治らないときは、使用者は平均賃金1200日分の打切補償を行うことで解雇制限を免れられることになります(同法19条1項ただし書)。

使用者自身が療養補償を行うのでなく、労災保険の給付がなされている場合(通常はこちらでしょう)、打切補償によって解雇制限を免れることはできません。

その代わり、療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金(※)を受けている場合又は3年を経過した日以後に傷病補償年金を受けることとなったときは、使用者が打切補償を行ったものとみなされ、解雇制限はなくなります(労災保険法19条)。

※傷病補償年金とは、労災保険給付の一種であり、負傷・疾病が療養開始後1年6か月を経過しても治っていない場合であって、1年6か月を経過した日において当該負傷・疾病による障害の程度が1級~3級(全部労働不能)の程度に達している場合に支給されるものです。

また、上記の「療養のため休業する期間」とは負傷・疾病が治癒又は症状固定するまでの期間と解されており、症状固定の日から30日を経過すれば、解雇制限はなくなります(光洋運輸事件名古屋地裁平成1年7月28日判決・労判567号64頁)。

もっとも、労基法19条1項による解雇制限がないとされる場合であっても、そのことは当該解雇が労基法19条1項によっては無効とされないことを意味するのみです。したがって、解雇に客観的に合理的理由があって社会通念上相当といえるか否か(労働契約法16条)、たとえば、従来の業務での就労が困難であるとしても他の業務への配置換えによって就労する可能性の有無等が問題となりえます。

通勤災害の場合

労災保険は、業務中の事故に限らず、通勤途中の交通事故にも適用されます。
しかしながら、通勤災害については、解雇制限の適用はありません。
したがって、万が一、通勤途中の交通事故が原因で会社から解雇を言い渡された場合には、交通事故の加害者に賠償請求を行うことになると思います。

契約社員の契約期間が満了した場合

労災事故での治療中に、契約社員の契約期間が満了した場合、会社が契約期間満了を理由に雇い止めにすることは可能です。

もっとも、契約社員が正社員と同視できるような立場にある場合には、契約社員の雇い止めといえるかが別途問題となることはあると思います。

労災事故に遭われた方へ

労災事故に遭われた方が、一人で会社や労働基準監督署とやりとりをすることは難しいと思います。
また、労災の制度を知らなかったばかりに大きな損失を被ることも少なくありません。

特に後遺症が残るような大きな怪我をされた場合には、将来の生活設計にも大きな影響を及ぼしますので、必ず専門家に相談することをお勧めします。

大阪鶴見法律事務所では労災事故の初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

06-6995-4861

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